



…かも、なの?
知らないことを聞いた時、必ずキミは、
はにかみながら、ボクに向かってその言葉を繰り返す
ちょっぴり語尾を上げながら
―東京、ゆくことに決めたの?
「決めた。今、行かないと、行けなくなっちゃうと思って」
―そっか。そうだよね
ボクは、卒業後も、この街で生きてゆくことを決めていた。
―家賃、このあたりの3倍くらいするみたいだよ、東京
「さんばい??」
マスク越しの瞳が、少し、はにかんでいる
―そう、3倍。もちろん、住むエリアにもよるんだろうけど
「そうなんだ。バイト、たくさんしなくちゃ、だね」
彼女がココを離れたら、当たり前だけど、会えなくなる。
―あのさ、東京へゆくから、というわけじゃないんだけど…
「え?」
―気づいていたとは思うんだけど…
「(…)」
―好きなのかも、しれない
「え…好き、なの?」
はにかみながら、聞き返された。あぁ、知らなかったのか。
瞬間、続けて…
「…かも、なの?」
photo・nishida shuhei
text・suzuki sachihiro
stylist・kawahara ayumi
hair make・takamatsu miki
update・2021.5.8
かわぐち・あおい
11月26日生まれ
https://twitter.com/aoi112631/